gorillarigo’s diary

Twitterの140字以内で表せない話をつらつらと書き綴ります。

小噺 戦争と平和

【小噺 戦争と平和

 A国とB国は云十年にわたり戦争をしている。云十年も前から始まっているため、今の若い世代は戦争が始まった理由は詳しく知らない。しかし、A国民もB国民も互いに憎みあっている。噂によるとA国王がB国王に対して、人種差別的発言をしたことが戦争の発端らしい。そこから二国間の外交関係は悪化の一途を辿り、戦争に至ったのだとか。

 さて、云十年が過ぎてしまったため、件の当代B国王が病魔によって亡くなったという。その際、B国王が亡くなるまでにつけていたという日記がメディア上で話題となった。その内容は、かつてA国王に罵倒されたこと、いまだA国王を恨んでいること、二国間の溝は決して埋まらないだろうということ、等々であった。

 この報道を受けてB国民は更にA国への敵愾心を燃やしたのであった。

 さて、この話は実は、偏向報道の話。

 

 B国王が亡くなった際、ある新聞記者が王宮関係者に呼び出された。彼は有名な報道マンであったため、国王の日記について喧伝するためには適任であったし、彼自身も国王の日記に対して興味があった。しかし、王宮関係者が言うには、

「この日記の内容が国民の目に触れることがあってはならない。全く情けない限りだ。こんなくだらない理由で民草が争いあっていたという現実があってはならないのだ。」

と。つまり、彼にはこの日記の内容を読み、意図的な偏向報道をさせる、ということだ。彼にとっても気は進まないが、この話を断ることはできなかった。彼が読んだ日記の最後のページ、原文はこうだ。

 

 〇月✕日 今日が日記をつける最期の日となるだろう。私はもう長くはない。しかし、最期にあの日の怒りを記そうと思う。あの日はあまりの怒り心頭ぶりに日記を残すことはできなかったからだ。それは、A国王を自国に招き、接待をしたあの日のこと。奴は我々の接待に対して付け上がり私を罵倒したのだ。戦争とは国家間のものではあれ、根差すところは文化の違い、思想の違いそういったものを許容し得ない迫害心から起こるものだ。奴と私には埋められない溝があり、協和的な関係は決して築き得ないのだ。まったく、奴のあの日の発言には反吐が出る。奴は私にこういったのだ。

 「ピンのみはダマに決まっている、B国の輩はそんなセオリーも知らんのか。」